日光とサハリンと私

アジアリーグアイスホッケー(以下、AL)のプレーオフ準決勝においてサハリンが日光アイスバックス戦でKHL(ロシア コンチネンタル・ホッケー・リーグ)のウラジオストクアドミラル(Admiral)に所属している3選手を出場させたとして、AL側に処分を求めた事件。
マイナースポーツの悲しさ?という事で世間では全く話題になっていませんが、日光側の主張を読むと「こっそり強いリーグから助っ人を借りてきてけしからん!」という感じで、大問題となるんじゃないか?!という訳です。
とりあえず個人的なまとめを書きましたが、この事件が世間に広まって欲しいような、アイスホッケー界の恥をさらすだけなんじゃないかと気を病むような、複雑な心境であります。。

以下は日光の公式HPのリンクです。
2017年03月30日 更新「サハリン選手登録違反についての報告と処分の要望
2017年03月31日 更新「アジアリーグからの回答書

ちなみに、ALの公式HPに出ている本件のリリースは下記。
2017.03.30「サハリン選手登録に関して
2017.04.01「サハリン選手登録に関してのご報告

日光の方は長文で怒り新党な感じですが、対するAL側はあっさりしすぎで「それだけでいいの?」って感じですね。
当事者の主張だけを読んでもなかなか理解が難しいので、少しデータを漁ってみました。

1.当該選手の出場状況
日光の主張によれば、重複出場していたのは下記3選手。
Sergei Ilyin
KHLには12試合出場(内、プレーオフ0試合)。ALには5試合出場。

Ilya Ivanov
KHLには16試合出場(内、プレーオフ5試合)。ALには15試合出場。

Yegor Yakovlev
KHLには39試合出場(内、プレーオフ1試合)。ALには3試合出場。

2.当該選手のAL出場記録(日付は出場試合の開催日)
出場記録.png

3.論点整理
日光の3/30付主張によれば、2017/1/1以降に他チーム(Admiral)でプレーしていた選手が、ALプレーオフにて再びALの登録選手としてプレーするのがALのリーグ規約違反である、と。
対して、AL側はその回答書(日光4/1付より)において、下記の通り回答しています。
(1)AL規約58条の「他のチーム」という表現が不明瞭でその範囲が確定できないので本件は違反であると断言できない
(2)AL規約56条の「第三者の主催するアイスホッケーまたはその他のスポーツの試合への参加」とは、「アイスバックスが2017年2月におこなったチャリティーゲーム」や「アジアリーグ選手のインラインホッケー大会の参加」も含まれる。(ので、お互い様ということか??)

4.考察
まず、本件はAL規約に関する問題なので、規約を読む必要があります。しかし、ご存じの通りALは日本・韓国・中国・ロシアの各国チームが参加する国際リーグです。そのため、規約を各チームに周知させるには各国語版の存在が不可欠となりますが、そのようなものの存在は(少なくとも公式HP上には)見当たりません。
通常、とりあえず英語版くらいは作っておいて、日本語版か英語版のどちらかを正本とするという対応が健全なリーグ運営には必要ではないでしょうか。

仮に、サハリンがこの日本語版の規約を自己手配でロシア語版等に翻訳した場合は、解釈がずれてくる可能性が当然あります。本件で問題になっている第58条(選手登録)などはかなり曖昧な書き方になっているので、リーグ側の言う通り様々な解釈が生まれる余地があります。
よって、サハリンが善意でリーグの意図せざる解釈を行ったのが原因であって処分を下すのはちょっと出来ない、という場合もあり得なくはないと思われます。(実際に、当該選手がALのレギュラーリーグでプレーしていたのは2016年なので、その時点で選手登録は行っていたと思われる。また、出場記録をみるとYakovlev選手以外は明らかな助っ人という感じでもない気が個人的にはします。)
しかし、その原因を作ったのはもちろんAL側にありますので、責任の所在を認めると共に、本件のような事が再発しないよう規約を徹底的に見直す事を表明すべきと考えます。

また、理由(2)については全く持って理解不能です。もし日光の選手が第56条に違反しているのなら、サハリンの選手共々処分を下すべきではないでしょうか?
本当にこのようなことを公式発言として行ったのかどうか疑わしいレベルですが、多くの日光ファンやALファンの方々が指摘している通り、私もこれには心底失望しました。
結論が暗くなって申し訳ないのですが、やっぱりまともなガバナンスが効いているかどうかというのは、リーグの成功条件になっているんだなあ、と感じます。(あのリーグやこのリーグをチラ見しながら)

(追記)
1)アドミラルというチームは、こんなチームらしいです。
アイスホッケーはウラジオ経由アジア着

2)日光は「今後の対応を協議中」との事ですが、日本スポーツ仲裁機構によるスポーツ仲裁を求めるのが現実的な対応でしょうか。(ALの上位団体である日本トップリーグ機構は日本オリンピック委員会の傘下にあるようですし)
ただし、選手個人ではなくチームに申請する権利があるのかどうか、AL側が仲裁に合意するかどうか、などがネックとなりますが。

3)ちなみに、「日本スポーツ仲裁機構によるスポーツ仲裁」というのはJリーグファンならご存知の方もいるかと思いますが、当時川崎フロンターレの我那覇選手がドーピング疑惑(冤罪)を晴らすために申し立てを行った団体で、Jリーグはその申し立てを拒否したためにスポーツ仲裁裁判所(CAS)に高額な費用を負担して訴えざるを得なかった、という事件がありました。(「争うは本意ならねど」参照)

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